はじめに
まず初めに、筆者は 13年間ファッションデザイナーとしてモノづくりに携わってきた。他のファッションメディアのライターに比べ、経験と知識はあると自負している。その経験と知識をもとに商品をレビューしていくが、あくまで筆者の見解であって、これが正解ではないということを理解して読んで頂きたい。
今後、買い物をする上の参考にしたり、ブランドのこだわりを知って貰ったり、クオリティに対してプライスは適正なのか? など、Google で検索してもあまり出てこないような内容にしていくつもりだ。
ピックアップする商品に関しては、今発売しているものから過去のものまで、基本的に筆者が気になったものをレビューしていくので、その点はご了承頂きたい。
Supreme “Box Logo Crewneck”
第一回目は、シュプリームの代表作でもあり定番商品でもある「Box Logo Crewneck スウェット」のレビューを書いていく。
シュプリームのボックスロゴシリーズと言えば、
- 並ばないと手に入らない
- オンラインストアでも即完売
- オークションなどで高値で取引きされている
- 偽物が反乱している
というイメージだろう。
スウェットに関して言えば、オークションや古着を扱うショップなどで大体 6〜10万円程度で取引きされている。
おそらくシュプリームは、一番手に入りにくく、一番偽物が多いブランドだろう。限られた場所で限られた枚数しか売らない。ブランド設立時から徹底したブレないブランディングを行っている数少ないブランドのひとつだ。だから、コアなファンが多いのだろう。
まずは「Box Logo Crewneck スウェット」の商品概要。
Supreme 2015FW
Box Logo Crewneck
Price: ¥29,160
Color: Grey, Navy, Red, White, Black, Pink, Camo
Quality: 綿100% (Grey: 綿90% ポリエステル10%)
Size: S – XL
今回レビューするのは、筆者が持っているグレーの Sサイズ。
Sのサイズチャート
着丈: 65cm
身巾: 55cm
肩巾: 43cm
袖丈: 62.5cm
人によってサイズの測り方の違いや商品の個体差もあるので参考程度にして欲しい。それでは素材、デザイン、縫製の順で詳しく見ていこう。
1. 素材
ヘビーウエイト裏起毛
素材は非常に肉厚でヘビーウエイトだ。かなり度詰めで編まれており、12オンス程度の重さはあるだろう。肉厚なため脱ぎ着するのが少し大変だ。裏に関しては、FW (秋冬) の商材ということもあり、裏毛 (ループ) ではなく裏起毛となっている。ジャージ素材の値段は基本的に重さで決まるので、この素材は安くはない。グレー杢の色目に関しては少し淡く筆者の好みである。
非常に細かく起毛されており、着心地 (肌に当たる感じ) はすごく良い。混率に関しては上記でも書いたように、グレー杢のみ[綿 90% ポリエステル 10%]となっている。ただし、混率に関してはシーズンによって違う可能性もあるので参考程度にして頂きたい。
2. デザイン
リバースウィーブへのオマージュ
シュプリームはチャンピオンともコラボレーションしており、デザインに関してはチャンピオンの「リバースウィーブ」をオマージュしているのが見て取れる。
細腹 (脇) 切り替え、袖口、裾、そして衿にフライスを使用している。スウェットやパーカーなどの厚手のジャージでは、フライスではなくスパンテレコを使用しているブランドが多い。しかし、ヴィンテージを熟知していて、ヴィンテージが好きなブランドは間違いなくフライスを使う。筆者もアメカジが大好きなので、このフライスは買うポイントのひとつだ。
特徴的な衿元
衿のデザインは非常に特徴的である。チャンピオンのリバースウィーブは天巾が少し広めで、前下りが浅いのに対して、シュプリームの衿のパターンは、天巾が狭く前下りが深めで、まるで円を描くようなデザインとなっている。その為、着用した時は首にきちんと沿う感じになっている。非常にオリジナリティのあるデザインだ。シュプリームのブランドネームの裏にはサイズと「Made in Canada」の文字が記されている。その横にも「Made in Canada」と表記されている小さな織りネームがある。
アイコニックな Box Logo 刺繍
ブランドの象徴でもある Box Logo。Tシャツはプリントだが、スウェット・パーカーは刺繍となっている。非常に針数も多く、細かくて綺麗な刺繍だ。刺繍の値段は針数で決まるので、この刺繍は結構コストをかけている。ただ、直打ちしており針数も多く、とにかく硬いので地肌で着るのは厳しい。下に Tシャツなどを着るのをオススメする。
左脇の裾部分にはピスネームが挟み込まれている。衿元のブランドネーム、そしてこのピスネーム、全てプリントではなく織り (ジャガード) ネームとなっている。このピスネームは色展開によってカラーが異なる。
3. 縫製
フラットシーマ (4本針)
筆者が今回一番驚いたのがフラットシーマ (4本針) を使用していることだ!フラットシーマは、もともと肌着や下着などの縫製で使用されるミシンで、日本国内でも台数が少なく、取り扱っている工場も少ない貴重なミシンだ。一番の特徴は、その仕上がりにある。3本針は裏側が膨れて肌に当たるが、フラットシーマはその名の通り裏側がフラット (平ら) に仕上がる。その為、着心地が非常によくストレスレスで着用できる。ただ、デメリットもある。普通のミシンに比べ、縫製技術を要し生産スピードが非常に遅くなる。そして、その分縫製のコストも高くなる。その為、日本のブランドでもフラットシーマを使用しているのはこだわったブランドのみとなる。
その他の部分 (裾リブ・AH・衿など) は、3本針で縫製している。これは完全に個人的な好みだが、筆者はスウェットの衿に関しては、この仕様ではなくバインダーが好きだ。このスウェットで唯一残念なとこだ。
さいごに
さいごに、定価である ¥29,160は適正か?と言われたら、上記の検証の他に輸入コストや代理店へのロイヤリティなどを踏まえると、適正だと断言できる。カナダの縫製賃の相場や、実際の生地代などは分からないが、非常に価値のある商品だと言い切れる。筆者が自ブランドを立ち上げた時、こだわったスウェットを国内で作ったが、¥29,160では全く原価率ハマらないコストになったのを覚えている、笑。
ちなみに、オークションなどで 5万円以上で買う価値はあるか?に対しては、自己判断で良いと思う。本当に好きな人は、品質などで値段を判断しているわけではなく、シュプリームというブランドの価値にお金を出しているのだから。
このレビューが、今後シュプリームを買おうと思っている人の参考に少しでもなれば幸いだ。
All Photos ©LIFEWARES Inc.
LIFEWARES Staff
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